PetMeds:AIを活用した不正注文検知でチャージバック(返金対応)件数を98%削減
- Ryosuke Murai
- Jan 14
- 4 min read
Updated: Feb 20
近年、ECサイトを中心にオンライン決済を悪用した詐欺や不正注文が増加しており、企業にとっては売上損失だけでなく、ブランドイメージの低下を招くリスクが高まっています。アメリカ最大級のペット向け医薬品販売会社 PetMeds は、この課題を解決するためにAIベースの不正注文検知ソリューションを導入し、リアルタイムでの不正監視と顧客保護を実現しました。本記事では、PetMedsの事例を通じてAI活用がもたらす具体的なメリットと、中小企業への示唆を紹介します。

PetMeds は、犬や猫をはじめとするペット向けに処方箋薬やサプリメントをオンラインで販売する、アメリカ最大級のペット薬局(Pet Pharmacy)です。多くの飼い主が獣医師を介さずに、必要な薬やサプリを手軽に購入できる点が支持されており、全米各地に数多くのリピーター顧客を抱えています。
PetMedsはビジネスモデルを拡大し、処方箋医薬品だけでなく市販薬や一般向け商品の販売を増やした結果、新たな不正注文の問題に直面しました。詐欺グループは盗まれた決済情報を使い、小売商品を大量に購入しては第三者向けのマーケットプレイスで転売を図っていたのです。
もともとPetMedsは処方箋医薬品が中心で、不正が起きにくい厳重な審査フローを整えていました。しかし、市販薬や一般商品の取り扱いが増えたことで、従来の対策では不正を十分に防ぎきれず、さらにリスク管理の多くを手作業に頼っていたことも重なり、新しいタイプの不正を抑止できなくなっていたのです。
契約締結からわずか30日後に運用開始
90日後の成果:
取引数が増加した一方、不正リスクを疑って差し止める(拒否する)注文は50%も減少
AIによる自動判定の精度が上がったことで、最終的に人がチェックすべき不審注文は全体の2%以下に。さらに、チャージバック(返金対応)発生件数も98%削減に成功しています。
Kount というAI-driven Fraud Detectionサービスを導入
従来はデータウェアハウスで定期的に不審取引を分析していたが、リアルタイム処理が難しく、常に最新の不正手法に対応しきれない課題があった
AIによる自動判定を取り入れることで、常時アップデートされる膨大なトランザクション情報を瞬時にクロスチェックし、高リスクの取引を即座に振り分け
もし疑わしい取引があれば、さらに手動レビューに回すことで誤判定を最小限に
1. 不正対策は「顧客を守る」ための投資
PetMedsの場合、「不正を防ぐ=コスト削減」という面だけでなく、正規顧客の利用体験を損ねないことが重要視されました。誤判定で真っ当な注文が拒否されれば、顧客満足度の低下につながります。AI導入によってリアルタイムで精度の高い判定が可能になり、顧客を大切にしながら不正をシャットアウトする両立が実現しました。
2. データ分析を“リアルタイム”に変える
従来のデータウェアハウスやバッチ処理では、新種の不正手口に対して迅速に対応しきれないケースが多くありました。PetMedsでは、AIが常に学習を続けることで最新の不正トレンドにも追随できる体制を作り、データ分析をリアルタイム化。これにより、不正ユーザーの一時的な攻撃で大きな損害を被るリスクを抑え込むことに成功しています。
3. 人手レビューの労力を大幅削減
EC事業での不正検知は、最終的に人間が判断しなければならないケースがどうしても発生します。しかし、AIが高い精度で事前スクリーニングすれば、人的リソースを本来必要な業務に集中できるようになり、結果的に顧客体験やコアサービスの充実にもつながっています。
「ブランドイメージを守る」= 「不正対策」
不正注文が増えると、コスト増だけでなく「安全でないサイト」というイメージがつき、顧客離れにつながりかねません。AIでリアルタイムに不正を防ぐことで、ブランドイメージを守る投資と捉える意識が重要です。
小規模ECでも導入可能
近年は、従来大企業向けだったAIソリューションも、クラウドサービスやSaaSとして提供されており、小規模店舗でも導入しやすくなっています。
リアルタイム分析=攻撃を最小限に
月に一度のデータ集計や、人の手による後追いチェックだけでは対応が遅れます。常にアップデートされるAIモデルを活用し、不正の芽を早期に摘み取る体制が大切です。
【まとめ】
PetMedsの成功事例は、AIを使った不正注文検知が、売上と顧客体験、両方を守る有効な手段であることを示しています。EC事業を運営する企業にとって、迅速かつ正確な不正対策は「コスト削減」と「ブランド保護」の両方に直結する課題です。大規模企業に限らず、中小企業でもAIソリューションを活用すれば、リアルタイムでの監視と適切なリスク管理によって、事業をより安定的かつ安心して拡大できるでしょう。まさに「AIの力で、ビジネスと顧客を同時に守る」好事例といえます。
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